森で散歩した人の体に起きていたこと。がんと戦う体を、後押しできる4つの行動 自分の体のために、今からできること。
どうも皆様、MSと申します。
さあ、今回はですね。
「がんに対する免疫の活性化」について、
研究で分かっている数字をもとに、
書いていきたいと思います。
きっかけは、
先日Threadsに書いた、
森とNK細胞の話でした。
「森で2泊3日過ごすと、
がん化した細胞を攻撃する
NK細胞の働きが高まる」という投稿です。
この投稿に、
思っていた何倍もの反応がありました。
皆様の反応と、返信を全て読んで
分かったことがあります。
それは何か?
がんは、
誰にとっても遠い話ではないということ。
自分、家族、友人。誰に起こっても
不思議ではありません。
私も皆様も、
決して他人事ではないということです。
なので今回は、
恐らくこうであろうとかではなく、
研究で確かめられていて、なおかつ
「比較的簡単に始められること」
だけを集めました。
先に、大事なことを
ひとつ書いておきます。
この記事は、
がんが治る方法の話ではありません。
書いてあるのは、
「リスクが下がる」
「体の働きが高まる」
という研究の結果までです。
言うまでもないとは思いますが、
治療中の方は、主治医の判断を
最優先にしてください。
そのうえで、体が持っている力を
生活の中で後押しできる、
という意味合いで読んで
もらえたらと思います。
それでは、
いっきましょーーー!!
まず前提として。体には、異常な細胞を見つけて消す仕組みが、最初から入っている。
私たちの体の中では、細胞分裂のミスや
紫外線、炎症などで、
遺伝子に傷が入ることがあります。
その中から、がんになりかけた
異常な細胞が生まれることがあります。
けれど、その多くは、がんになる前に
消えています。
細胞が自分で傷を直したり、
自分から消えたり、
免疫が見つけて
壊してくれたりしているからです。
これらの、免疫が見張る仕組みは、
「免疫監視」と呼ばれています。
そして、
その確かめ方は、はっきりしています。
臓器移植のあと、免疫を抑える薬を
使っている人は、がんが増えること。
そして、免疫の力を戻す薬
(免疫チェックポイント阻害薬)が、
がん治療として実際に使われていること。
見張りを弱めると、がんが増える。
見張りのブレーキを外すことが、治療になる。
だから、見張りは存在すると言えます。
その見張り役の一つが、
NK細胞(ナチュラルキラー細胞)です。
ウイルスに感染した細胞や、
がん化した細胞を見つけると、
パーフォリンやグランザイムという
タンパク質を使って攻撃します。
T細胞と違って、
相手を「学習」する必要がなく、
見つけたその場で動けるのが特徴です。
つまり体は、何もしなくても、
この仕事をずっと続けてくれています。
ただし、先に書いておきます。
がんになった人が、何かを怠ったという
話ではありません。
どれだけ気をつけていても、
なる人はなります。
この記事は、体に備わっている仕組みを、
少しだけ手伝う話です。
では、その働きを生活で高めることはできるのか。
ここからが、本題です。
1.森で2泊3日。免疫に起きたこと
日本医科大学の李卿(り・けい)
博士の研究です。
健康な男性12人(35〜56歳)が、
森で2泊3日を過ごしました。
1日目は午後に2時間、
2日目は午前と午後に2時間ずつ、
森の中を歩く。それだけです。
その前後で血液を調べると、
・NK細胞の働き(NK活性)が上がった
・NK細胞の数が増えた
・パーフォリン、グラニュライシン、
グランザイムA/Bを持つ細胞が増えた
・尿中のアドレナリン(ストレスホルモン)が減った
パーフォリンやグランザイムは、
NK細胞ががん化した細胞を
攻撃するときに使う武器です。
つまり、
攻撃する細胞が増え、
武器も増え、ストレスは下がった。
しかもこの効果は、
帰ってからも続きました。
2008年の論文では
「7日以上」持続。
同じ研究室が2010年にまとめた総説では、
NK活性とNK細胞の数は
30日後まで高いままだったと
報告されています。
そこから博士は、
「月に一度、森へ行けば
高いNK活性を保てるのではないか」
と書いています。
女性でも同じことを確かめています。
看護師13人(25〜43歳)が
同じ2泊3日を過ごしたところ、
NK活性と抗がんタンパクを持つ細胞が増え、
7日以上続きました。
ここで正直に書いておきます。
12人と13人。
どちらも小さな研究です。
数字は強いですが、
母数は小さい。
それに、測ったのは血液の数値です。
がんが減ったかどうかまでは、
調べていません。
それでも、
この研究が面白いのは次の点です。
2.なぜ、都市の旅行では起きなかったのか
同じ研究で、11人が、
今度は森のない都市(名古屋)を
旅行しました。
歩く時間も、運動量も、
森のときと同じにそろえています。
結果、
有意な変化は見られませんでした。
NK活性も、NK細胞の数も、
抗がんタンパクも、アドレナリンも、
変わらなかった。
つまり、
「旅行してリラックスしたから」
ではないのです。
森の環境に特有の何かが関係している可能性があります。
李博士が注目したのは、
フィトンチッドです。
木が出す揮発性の物質で、
α-ピネンやβ-ピネンといった成分が
森の空気からは検出され、
都市の空気からはほとんど
検出されませんでした。
そこで博士は、
もう一つ実験をしています。
都市部のホテルに宿泊し、
寝る前からヒノキの精油の香りを部屋に広げ、
その環境で3晩過ごしました。
森には行かない。
部屋に木の香りがあるだけ。
それでも、
NK活性は上がり、
抗がんタンパクを持つ細胞は増え、
アドレナリンは下がりました。
木の香りの成分が、
免疫の数値に関わっているかもしれない。
そう示した、12人の小さな研究です。
ただ、これ1本で
「ヒノキの香りで、森林浴と同じ効果」
とまでは言えません。
3.運動は「気休め」ではなかった。889人の試験
ここまでは免疫の話でした。
では、がんそのものの
再発や生存に、
生活は関係するのか。
長いあいだ、
「運動する人は再発が少ない」
という観察はありました。
でも観察だけでは、
「元気な人が運動しているだけでは」
という疑いが消えません。
それを、
大規模なランダム化試験で
本格的に確かめたのが
2025年に発表された
CHALLENGE試験です。
対象は、
手術と抗がん剤治療を終えた
再発しやすいステージの
結腸がん(大腸がんの一種)の
患者889人。
カナダやオーストラリアなど
55の施設が参加しました。
くじ引きで2つに分けます。
・運動プログラムの群
(専門家と面談しながら3年間、運動を続ける)
・健康教育の資料だけの群
追跡は中央値で7.9年。
結果はこうでした。
・5年後に再発なく生きていた人
運動群 80.3%
資料のみ 73.9%
・再発・新しいがん・死亡を合わせたリスク
運動群で28%低い
・死亡のリスク
運動群で37%低い
・8年後に生きていた人
運動群 90.3%
資料のみ 83.2%
最初の目標は、普段の運動量から
週10メッツ・時ほど増やすことでした。
メッツというのは、運動の強さの単位です。
じっと座っている状態が1。
ゆっくり歩きが約2.5、ふつうの散歩が約3、
早足が約4です。
「強さ×時間」で量を数えるので、
弱い運動なら、そのぶん長く歩けば
同じ量になります。
週に10メッツ・時を、歩きに直すと、
およそこうなります。
・早足なら、週3回、50分ほど
・ふつうの散歩なら、週5回、40分ほど
・ゆっくり歩きなら、毎日35分ほど
速く歩けない人も、時間で埋められる、
ということです。
ただし、これは目安です。
この研究では、
3年間、専門家の指導を受けながら運動をしました。
ただ、
「何分歩く」「どんな歩き方をする」
と細かく決められていたわけではありません。
研究で示された運動量を、
日常で分かりやすく
「歩く時間」に置き換えて紹介しています。
なお、試験で行われたのは、
主に早歩き以上の運動です。
ゆっくり歩きの換算は、
あくまで計算上の目安です。
まずは、今より少し多く歩く。
量は、あとから増やせます。
標準治療を終えたあと、生活に運動を加えることで、
この差が出たという結果です。
デメリットもあります。
筋肉や関節のトラブルが起きた人は、
運動したグループでは約5人に1人、
資料だけのグループでは約9人に1人でした。
運動する分、
ケガや痛みのリスクは少し増えます。
無理な運動を勧める話ではありません。
それでも、
「運動は気休め」と
言えなくなった。
それが、この試験の意味だと思います。
4.診断のあとに、動いた人たち
先程のCHALLENGE試験は
大腸がんの方が対象でした。
他のがんでは、どうか。
こちらは観察研究の
メタ分析(複数の研究をまとめた分析)です。
・前立腺がん
10研究、5万人以上、死亡28,044人。
診断後によく体を動かしていた人は、
死亡リスクが31%低い。
・子宮体がん・卵巣がんなど婦人科がん
10研究、死亡3,867人。
よく動いていた人は、
死亡リスクが35%低い。
どちらも2026年に
海外の研究チームが発表したものです。
ですが、
あくまで、これらは観察研究です。
「動いていた人が長生きした」
ことは分かっても、
「動いたから長生きした」
とまでは言えません。
もともと体調がよい人ほど
動けた、という可能性が残ります。
だからこそ、
くじ引きで分けた
CHALLENGE試験の結果が
重い意味を持ちます。
観察研究が示していた方向を、
大腸がんでは、本格的な試験が裏付けた。
そう読むのが正確だと思います。
5.1日7,000歩という、現実的な線
「運動」と言われると、
ハードルが高く感じる人もいると思います。
そこで、歩数の研究です。
2025年、
Lancet Public Healthに載った
メタ分析があります。
57の研究をまとめ、
1日の歩数と
さまざまな健康の結果を調べました。
1日2,000歩の人と比べて、
7,000歩の人は、
・死亡リスクが47%低い
・がんで死亡するリスクが37%低い
・認知症のリスクが38%低い
・うつ症状のリスクが22%低い
ここも正直に書きます。
「がんになるリスク」については、
6%低いという結果でしたが、
統計的にはっきりした差では
ありませんでした。
歩くことで、
がんに「ならない」とは言えない。
でも、がんで「亡くなる」リスクは、
はっきりと低かった。
そして、研究者自身が、
「7,000歩は、より現実的で達成しやすい
目標かもしれない」と書いています。
これも観察研究なので、
因果関係とまでは言えません。
それでも、
毎日の7,000歩は、
今日からでも始められる
歩数ではないでしょうか。
6.人とのつながりも、数字に出ている
最後は、体ではなく、心の話です。
2010年に、87の研究をまとめたメタ分析が出ています。
がんと診断された人のうち、
・周りの支えを感じている人は、死亡リスクが25%低い
・人間関係が広い人は、20%低い
・結婚している人は、12%低い
という数字が出ています。
この研究も観察研究です。
何度も言いますが、
つながりが原因とは断言できません。
もともと元気な人ほど、人付き合いが続いている、
という逆の可能性もあります。
それでも、理由として考えられていることはあります。
支えがある人は、ストレスホルモンが下がりやすいこと。
治療を途中でやめにくいこと。
体調の変化に、誰かが先に気づいてくれること。
思い出してほしいのは、森の章です。
森で下がっていたのも、
ストレスホルモンでした。
森・運動・歩数と並べて「心」が入ってくるのは、
偶然ではないのだと思います。
体の話をしているようで、結局は、
どう生きていくかの話に
なってくる気がします。
この章の行動は、ひとつだけです。
最近話していない誰かに、連絡をする。
それだけで、今日の分は十分だと
思います。
7.私の答え。体は毎日戦っている。その体を手伝えることは、思ったより多い。
ここからは、研究ではなく、
私の考えです。
がんという言葉には、
「自分にはどうしようもない」
という響きがあります。
でも、ここまでの研究を並べてみると、
少し違う景色が見えてきます。
体は、何もしなくても
毎日がん化した細胞と戦っている。
そして、小さな研究では、
森に行ったあと、その働きが上がった。
木の香りでも上がった。
再発のリスクは、
運動を生活に加えることで下がる。
7,000歩歩いている人は、
がんで亡くなるリスクが低かった。
人とのつながりも、数字に出ている。
どれも、劇的な話ではありません。
治るとも、防げるとも、
書いていません。
でも、
「自分にできることは何もない」
という話でもなかった。
私はそれを、
希望と呼んでいいと思っています。
大きな希望ではなく、今日すぐにでも
実行できる小さな希望ではありますが、
やる価値は十分あります。
そして実はこういう研究は、まだ他にもあるんです。
ですから続編も執筆予定です。
これを読んで少しでも役に立ったと思う方は
ぜひ続編も読んでみてください!
8.まとめ:今日から決められること
・森に行く時間を作る。
森に行けないときは、
木の香りを生活に取り入れてみる
・早足なら週3回、50分ほど歩く。
ゆっくりなら、毎日35分でいい
・毎日7,000歩を目安にする。
1万歩でなくていい
・人と会う。
支えを感じられる関係を
一つでも持っておく
現段階で研究が教えてくれるのは、
ここまでです。
その先の、「やるかどうか」は、
自分で決められます。
そのうえで、体が毎日やっている仕事を、
少しだけ手伝ってあげる。
それが、今の私たちにできる
一番現実的な行動だと思っています。
以上となります。
いかがだったでしょうか?
この記事が少しでも役に立ったのであれば
嬉しく思います。
それではまた別の記事で!
MS
参考文献
・Li Q, et al. (2008). Visiting a forest, but not a city, increases human natural killer activity and expression of anti-cancer proteins. International Journal of Immunopathology and Pharmacology, 21(1), 117–127.
・Li Q, et al. (2008). A forest bathing trip increases human natural killer activity and expression of anti-cancer proteins in female subjects. Journal of Biological Regulators and Homeostatic Agents, 22(1), 45–55.
・Li Q, et al. (2009). Effect of phytoncide from trees on human natural killer cell function. International Journal of Immunopathology and Pharmacology, 22(4), 951–959.
・Li Q. (2010). Effect of forest bathing trips on human immune function. Environmental Health and Preventive Medicine, 15(1), 9–17.
・Courneya KS, et al. (2025). Structured Exercise after Adjuvant Chemotherapy for Colon Cancer. New England Journal of Medicine, 393(1), 13–25.
・Benker P, et al. (2026). Post-diagnosis physical activity in relation to mortality among prostate cancer survivors: a systematic review and meta-analysis. Cancer Causes & Control, 37(7), 108.
・Hamann A, et al. (2026). Post-diagnosis physical activity in relation to mortality among gynecological cancer survivors. Cancer Causes & Control, 37(8), 121.
・Ding D, et al. (2025). Daily steps and health outcomes in adults: a systematic review and dose-response meta-analysis. The Lancet Public Health, 10(8), e668–e681.
・Pinquart M, Duberstein PR. (2010). Associations of social networks with cancer mortality: a meta-analysis. Critical Reviews in Oncology/Hematology, 75(2), 122–137.
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