「質より量か、量より質か」に終止符。1万時間の法則の本質は、時間ではなかった

「質より量か、量より質か」に終止符。1万時間の法則の本質は、時間ではなかった
MS|自由持ちラボ


どうも皆様、MSと申します。

今回はですねーーー。

「1万時間の法則」

どこかで聞いたことがある人は
多いと思います。

そして、たいていこう受け取ります。

「1万時間やらないと、何者にもなれない」
「じゃあ、もっとがんばらないと」

私も、そう思っていました。

でも、この話の出どころを調べていくと
少し違う景色が見えてきます。

早速ですが
先に答えを言います。
1万時間の本質は、時間ではなく
「答え合わせの回数」でした。

ただ、なぜそうなるのかを
調べていくと
「え、そうだったの?」が
3回くらい出てきます。

そして最後には、あの永遠の問い
質より量か、量より質か
にも、終止符を打ちたいと思います。

それでは、いきましょーーー!



第1章 「1万時間の法則」は、どこから来たのか


まず、1万時間はどれぐらいの感じなのかを
分かりやすくお伝えすると、

  • 1日2時間 → 約14年
  • 1日4時間 → 約7年
  • 1日8時間 → 約3年半

休みなく毎日やったとしてこの年数です。

まあ会社で言えば、とりあえず1人前といいますか、
1人でも一通りはこなせるレベルを
イメージして頂けるといいのかなと思います。

さて、ここで話は1993年にさかのぼります。

心理学者の K. アンダース・エリクソンらが、
ベルリンの音楽学校でバイオリンを
学ぶ学生を調べました。


学生を実力別のグループに分けて、
それぞれがこれまでにどれくらい練習してきたのか、
総練習時間を調べたんですね。

そこで分かったのは、
18歳の時点で、トップ層の学生は
平均で約7,400時間の練習を積んでいた
ということでした。

このペースを20歳まで続けると、
合計で約1万時間前後に達する
論文では推計されています。

ここまでは、ただの調査結果です。

これを、作家のマルコム・グラッドウェルが
2008年の本『天才!』で紹介しました。

ビートルズはハンブルクでの長期ライブで
1万時間以上演奏した。

ビル・ゲイツも10代から
プログラミングに打ち込み、1万時間を超えた。

そんな話と一緒に、
1万時間やれば世界レベルになれる」という
キャッチーな言葉で世界中に広まりました。

それが「1万時間の法則」です。




第2章 元の研究者は、その法則を否定している


ここが、面白いところです。

エリクソン本人が後に
「そんな法則は言っていない」と
はっきり反論しています。

彼の言い分は、こうです。

1万時間は平均値であって、魔法の数字ではない。
1万時間で「完成」する話でもない。

大事なのは時間の長さより、練習の中身。

つまり、広まった時点で
意味がすり替わっていたんですね。

言い換えると、こういうことです。

「トップの人たちは、結果的に
1万時間くらい練習していた」

これを、
「1万時間やれば、トップになれる」

と読み替えてしまった。
順番が、逆になっているんです。

「プロ野球選手は、みんな毎日練習していた」

だから「毎日練習すれば、
誰でもプロ野球選手になれる」
そう言われたら、おかしいと分かりますよね。

でも「1万時間」は、それと同じ
すり替えが起きたまま、
20年近く信じられてきたそうです。




第3章 ここが面白い!!88件の研究が出した答え


では、練習量はどれくらい効果があるのか。

2014年、マクナマラらの研究チームが
それまでに出ていた88件の研究を
まとめて分析しました。

「練習量は、成績の差を
どれくらい説明できるのか」

これを分野ごとに調べたものです。

結果がこちらです。
『えーーーー!』って結果です。

ゲーム:26%
音楽:21%
スポーツ:18%
学業:4%
仕事・専門職:1%未満
全体では、約12%。

つまり、残りの約9割は
練習量以外の何かで
決まっていたということになります。

そして、注目してほしいのが
仕事の分野の数字です。

1%未満。

私たちが人生でいちばん
長く時間を使う場所では、
練習量は、ほとんど効いていませんでした。

もうひとつ、
印象的なデータがあります。

チェスの研究では、
同じレベルに到達するまでに
どれくらい時間がかかったのかを、
一人ひとり調べました。

すると、
3,000時間で届いた人もいれば、
2万時間かかった人もいました。

同じゴールなのに、
その差は約7倍です。

つまり、必要な時間は
人によって大きく違う。

「最低でも1万時間やればいい」
そんな共通の基準は、
存在しないということです。




第4章 練習量が効く世界と、効かない世界がある



さて、ここで大事な話をします。

さっきの数字を、もう一度見てください。

ゲーム・音楽・スポーツは、20%前後。
仕事は、1%未満。

なぜ、ここまで差が出るのか。

練習量がよく効く世界と
ほとんど効かない世界があるからです。

効く世界(ゲーム・音楽・スポーツ)
ルールが決まっている
同じ動きを、何度も繰り返せる
良し悪しが、その場で分かる

ピアノで音を外せば、すぐ耳で分かります。
チェスで悪手を打てば、数手後に負けます。

やって、結果が返ってきて、直せる。
だから、積んだ時間が
そのまま実力になるというわけです。

効きにくい世界(仕事・専門職)
毎回、状況が違う
何が正解か、決まっていない
結果が出るまで、時間がかかる

企画を出しても
それが良かったのかどうか
半年たっても分からないことがあります。

そもそも「正解」が
誰にも分かっていない場合も
多いのではないでしょうか。

私たちの毎日の仕事は
明らかに後者です。

だから、同じ会社で10年耐えても
それだけでは何者にもなれないことも
少なくはないのではないでしょうか。

でもこれは、努力が
足りなかったからではありません。

そもそも、時間を積むだけでは
積み上がらない世界にいるからなんです。




第5章 積み上がらない世界で、本当に積み上がるもの


では、そんな世界で本当に
積み上がるものは何なのでしょうか。

第4章で見たとおり、
練習が効きやすいのは
「結果がすぐ返ってくる」
「毎回の状況が似ている」
この2つがそろっているときでした。

ところが仕事は、この2つが
そろわないことが多いです。

同じことをしても、
相手や景気、
タイミングによって
結果が変わることもある。

だから私は、
こう考えています。

1万時間が
効かないのではありません。

答え合わせのない1万時間が、
積み上がりにくいのです。

大事なのは、
使った時間そのものではなく
何回試したか。
何が返ってきたか。

そして、
その反応をもとに
何回直したか。
つまり、
積み上がっているのは
時間ではなく、

「答え合わせが返ってきた回数」
なのだと思います。

たとえば、
同じ1時間でも違います。

何も外に出さず、
同じ作業を続ける1時間。

そこには、新しい答え合わせが
ほとんどありません。

一方で、出してみる。
反応を見る。直してみる。
また出してみる。

この1時間には、
何度も答え合わせがあります。

同じ1時間でも、積み上がる量は
まったく違うのです。





第6章 「質より量か、量より質か」は、偽の対立だった


さて、ここで本題です。

質より量か、量より質か。

これ、ずっと語られてきた対立ですよね。

「まず量をこなせ」派と
「雑にやっても意味がない」派が
いつまでも言い合っている。

でも私は、これは偽の対立だと
思っています。

実は、エリクソンが本当に言っていた
「意図的な練習」の中身は、こうでした。

今の実力より、少し難しいことに挑む。
結果を見て、直す。
それを、大量に繰り返す。

見てください。

最初から『質の高い練習を大量にやる』
が答えだったんです。

二択ではなかったのです。

世間が「1万時間」という
量の部分だけを切り取ったから
話がねじれてしまったのだと思います。

質と量は、天秤の両側に乗っているのではなく
掛け算になっているのです。

どちらかがゼロなら、
答えもゼロということになります。





第7章 私の答え 今思える最善を、大量にやる


ここからは、完全に私の持論です。

私は、こう考えています。

『今思える最善を、大量にやる』
これが、いちばんの正解だと思っています。

なぜ「今思える」なのか

「もっと質を上げてから出そう」と
言う人は、いつまでも出しません。

気持ちは分かります。

でも、ここに落とし穴があります。
質の基準そのものが
量をこなさないと上がらないからです。

今の自分に見えている「良い」を
全力で出す。反応が返ってくる。
「良い」の基準が、少し上がる。

そしてまた出す。

この繰り返しでしか、
質は上がっていきません。

だからこそ、未来の自分が
「これが良い」と思うものを、
今の自分が先回りして
作ることはできないのです。

今出せるのは、
現時点の自分の最高火力。
それだけです。

そして、
それを出し惜しみしている間は、
答え合わせが一度も返ってきません。

例えば、記事を書くことも私にとっては
実験に近い感覚です。

書く。出す。反応を見る。

伸びた記事と、
伸びなかった記事の違いを考える。

そこから、次に書くものを決める。

出すたびに、小さな答え合わせが
返ってくるんですね。

そして続けていると、打席に立った回数だけ、
見えるものが増えていきます。

去年の自分が
「これで良い」と思っていたものも、

今見ると、直したいところが
たくさんあるかもしれません。

でもそれは、去年の自分が
サボっていたからではありません。

去年の自分には、
まだ見えていなかっただけです。

見えるようになったのは、
出して、反応を受け取って、考えて、
また直してきたからです。

つまり、質が上がったから
出せるようになったのではなく、

出し続けたから、
質が上がったのです。

その時点で出せる最高のものを出す。

そして、返ってきた答えを使って
次を少し良くする。

『今思える最善を、大量にやる』
これが、私の答えです。




まとめ


今回の話をまとめます。

「1万時間の法則」は、研究者本人が否定しています

練習量が成績を説明できたのは、
仕事の分野では1%未満

同じ実力に届くまで、
3,000時間の人も2万時間の人もいる

効くのは、時間の長さではなく
「答え合わせが返ってくる回数」

質か量かは偽の対立。
今思える最善を、大量にやる

「1万時間やらなきゃダメなんだ」
そう思って、がんばろうとしていた方へ。
その気持ちは、まったく間違っていません。

ただ、大事なのは時間の長さではなく
打席に立った回数(答え合わせの回数)です。

1万時間が効かないのではありません。
答え合わせのない1万時間が、
効かないだけなのです。

そして、
どこで、何回打席に立つのか。
それは、自分で決められます。

今できる最高火力を、
今日もひとつ試す。

私は、それで十分、
前に進んでいると断言します。



最後に


以上となります。

いかがだったでしょうか。

「1万時間の法則」が広く知られた理由も、
よく分かる気がします。

「それくらいやれば、いつか何とかなる」
そう思わせてくれる言葉は、
とても分かりやすく、
モチベーションにもなります。

努力には意味がある。
続ければ、
いつか届くかもしれない。

そう思えるだけでも、
人は前に進めます。

ただ、
今回見てきたように、

「1万時間」という数字そのものに、
絶対的な意味があるわけではありません。

大切なのは、数字に縛られすぎないこと。

1万時間という目安を、
自分を追い込むための基準に
しなくてもいいということです。

人によって、必要な時間は違います。

だからこそ、「まだ足りない」
ではなく、「自分のペースでいい。
ただ、打席には立ち続ける」

そんなふうに
受け取ってもらえたらと思います。

この記事が少しでも
誰かのお役に立てれば幸いです。

それではまた、別の記事で!

MS








参考文献


Ericsson, K. A., Krampe, R. T., & Tesch-Römer, C. (1993). The role of deliberate practice in the acquisition of expert performance. Psychological Review, 100(3), 363–406.
Gladwell, M. (2008). Outliers: The Story of Success.(邦訳『天才! 成功する人々の法則』)
Macnamara, B. N., Hambrick, D. Z., & Oswald, F. L. (2014). Deliberate practice and performance in music, games, sports, education, and professions: A meta-analysis. Psychological Science, 25(8), 1608–1618.
Gobet, F., & Campitelli, G. (2007). The role of domain-specific practice, handedness, and starting age in chess. Developmental Psychology, 43(1), 159–172.
Ericsson, A., & Pool, R. (2016). Peak: Secrets from the New Science of Expertise.(邦訳『超一流になるのは才能か努力か?』)

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経営者。会社員時代の違和感から独立を決意。現在は独学で学んだ海外輸出事業を軸に、その過程で得た知見をもとに、お金・幸福・科学・思考について発信しています。テーマは「お金持ち」ではなく、選択の自由、自己裁量権の最大化を最も重要とする生き方「自由持ち」。海外の最新論文や古典も交え、温故知新と実体験を掛け合わせ、本質をシンプルかつ再現性ある形で届けます。遠回りに見えて最短の道を選びたい人へ。

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